世界基準の歯科感染対策
ゴールデンウィークは8日間の休診とし、消毒滅菌室を全面改装しております。
4/30(金)、5/1(土)は休診とさせていただいております。
患者さんにはご迷惑をおかけいたします。
そして施工業者さんありがとうございます!
今回は歯科医院の感染対策のお話です。
日本の歯科医院の感染対策は、1939年に作られた基準(スポルディングの分類)で指導されてるそうです。
私たち歯科医師・歯科衛生士も大学で習い、歯科医師国家試験でも出題されます。
厚生労働省の定める施設基準の根拠にもなっています。
ところが、近年は一部メーカーやヨーロッパ基準を取り入れる歯科医師のご尽力で、当院のような地方の歯科医院でも「世界基準の歯科感染対策」を知ることができるようになってきました。
ちなみに院長は中村健太郎先生(MELAG公式インストラクター)のセミナーを受講しました。
また山鹿市の大坂総合歯科を見学させていただき、現在の日本の感染対策の考え方とは大きく異なることを学びました。
例えるなら、日本の歯科感染対策は「ガラケー」みたいに、オリジナルにガラパゴス化してしまっているのです。
海外から見ると、日本の歯科感染対策は「クレイジー!」って見えてるらしいんですね…
●スポルディング分類の使いづらさ
記載されている消毒薬剤がドギツいやつばっかりで、スタッフにとって危険すぎて、一般歯科医院で運用するのは至難です。
滅菌スタッフにガウンにビニルエプロン、ゴーグルにキャップなど超重装備させ、人体に有害な消毒薬を用いて作業することになります。
スタッフに対してリスクや負担がとても大きくなります。
●滅菌機への誤解
そこで高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)が登場します。
薬剤ではなく、高圧蒸気で細菌やウイルスをやっつけましょうとなります。
図のように、滅菌機はクラスBとかSとかNとかあります。
「クラスB滅菌機を導入しているから、当院の滅菌設備は完璧です!」みたいなHPもありますね。
このクラスというのは、複雑な器材にどのくらい蒸気が侵入できるかの分類であって、滅菌の強さとは関係ありません。
さらにクラスB滅菌機というのも運用がやっかいで、まず滅菌前の適切な洗浄、基準を遵守したパッキング、滅菌機内の器材配置(一度にたくさんは入らず不便)、滅菌機のバリデーションなど厳守する必要があります。
バリデーション(滅菌機が正しく作動していることを試験剤で確認する日常的なテスト)を実施している医院がどのくらいあるでしょうか?
このように、高価な滅菌機が設置されているだけでは効果がでないのです。
●ドイツRKIガイドラインに基づいた院内感染対策
さらに、感染対策には高性能な機器の設置だけでなく、運用するスタッフの教育、設置される部屋(スタビライゼーションルーム)の動線設計、安全で適切なマニュアル作成など、システムを構築する必要があります。
当院では、次のようなシステムに移行していきます。
①ウォッシャーディスインフェクター(自動洗浄機)の運用
予備洗浄→高圧薬液洗浄→90℃以上の薬液高温消毒→乾燥工程
これを信頼性の高い全自動機械で行います。
スタッフの受傷・感染リスクを大きく減らし、かつスタッフ間での技術差がなくなり、均質・高精度な洗浄消毒が行われます。
スタッフの仕事は、器材の機械間の移動と、バリデーション(日常の機械動作試験)に変わります。
②滅菌機の適切な運用
繰り返しになりますが、重要なのは高価な滅菌機を設置することではなく、正しく運用することです。
自動洗浄機で洗浄消毒した器材を、必要に応じてパッキングし、決められたクラスの滅菌機に投入後、適切な保管管理を行います。
従来の日本の歯科医院に多いと思われる「滅菌器に入れれば滅菌されて完璧!」という間違いを正します。
滅菌パックの使い回しとかもナンセンスです。
③感染対策を行う歯科スタッフの教育
感染対策は設備が行うのではなく、設備を運用する人間が行うものだと考えるようになりました。
なので、当院では「自動洗浄機や複数クラスの滅菌機を中心とした器具再生システムを構築し、常時バリデーションを行なっており、それを運用する専門スタッフの教育を適時実施することで、院内感染対策を徹底しています」と言えるようにしていきます。
感染対策は歯科助手や歯科衛生士が業務の合間でこなす雑務、という形では不適切です。
これは施設管理者である院長の重要な仕事だと考えます。
④感染対策を行うための動線改修
滅菌消毒システムをRKIガイドラインに従い、「シンプルに・安全に・均質で」オペレーションができるよう消毒滅菌室をスタビライゼーションルームへと改修します。
動線が一方通行になるよう、器具再生の工程をカラーコードで見える化します。
担当スタッフも安心・安全です。
患者さんに適切に消毒・滅菌された器材で歯科医療を提供することができます。
設備費用、改修費用にすさまじい金額がかかりますが、数年前からどうしてもやりたい設備投資でした。
にじの森歯科クリニックを支持してくれる患者さん・スタッフが増えてくれるからこそ、それに応えるためによりよい設備投資を行います。
スタッフ数もこれまでにない大所帯になっており、スタッフが自信を持って歯科医療を提供できる環境を整えていきたいと思います。