治療相談〜奥歯の審美ブリッジ〜

歯茎の違和感を主訴に来院された患者さんです。

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わかりにくいですが、矢印の銀歯はレントゲンで見ると、根がまっぷたつに割れてしまっています。

この歯はすでにブリッジ(ある歯がなくなった時に、その両隣の歯を銀歯でつないで橋を架ける治療方法)の支えになっています。

この歯を抜歯すると、連続する2本の歯を失ったことになります。

同じようにブリッジで歯を作ろうとすると、両隣の2本を利用して、4本分の歯を2本の歯で支えることになります。

単純計算すると、1本の歯で2本分の咬み合わせの力を負担することになります(現実には、2倍の負担どころではありません)

そもそも、もともとブリッジを支えていて割れてしまった部分を、更に条件の悪いブリッジで再治療するわけですから、予後(今回の治療が健康に存続する見込み)はあまり良くはないと思われます。

しかも、他にももう1本割れている歯が見つかりました。

にじの森歯科クリニックでは、このような治療に関するとても大切な考え方を、時間をとって患者さんと相談します。

選択肢としては、おおまかに①ブリッジ、②入れ歯、③インプラントから選択しなければなりません。

さらに①・②では保険内治療と審美性や清掃性、使用感などに優れる自費治療との選択も必要です。

それぞれの治療方法の利点、欠点を説明しながら、今回は③インプラントが非常に有効な症例だと説明しました。

理由は、歯が割れるという力の問題に対抗するには、咬み合わせを支える能力に優れるインプラントが最適だからです。

しかし、患者さんは過去のインプラント治療でトラウマチックな経験があり、インプラントは絶対にしたくないとのことでした。

今回は妥協案として、自費治療でのジルコニアセラミックブリッジを選択されました。

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治療方針を決定したところで、まずは抜歯を行います。

明らかに歯の根が割れていますね。

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完成したジルコニアセラミックブリッジです。

仮歯での舌感触、噛み合わせ、歯茎との馴染みの確認をしっかりと行っていますので、違和感は全くないとのことでした。

さらに専属の歯科技工士も来院し、患者さんと審美に関する綿密な打ち合わせを行いました。

結果、施術者としても非常にきれいに治療ができたと思います。

ただし、力の問題に対しては将来性に不安の残る結果となります。

今後のアフターフォローが絶対に欠かせないと思われます。

今回のように、インプラントに対してアレルギーのように否定感情を持たれる患者さんは少なからずいらっしゃいます。

昨今の報道や、現実の事故の発生を考えると、ご不安もごもっともだと思います。

ただ、そういった精神的な拒否感とは別に、インプラントは単なる治療のいち選択肢として、冷静に捉えていただきたいと思います。

いくつかある治療方法のなかから、メリットとデメリットをよーく考えて、ご自身の人生のために後悔のない最適な選択をしてほしいと思います。

私は自分のある親族にはインプラント治療を行っています。

一方で、他の親族にはには義歯(入れ歯)治療を行っています。

今回のようにジルコニアセラミックブリッジで治療を行った親族もいます。

その患者さんに最適な治療方法はどれなのかを考えています。

その患者さんの口腔内状態や全身状態、生活習慣や食生活の好みが違います。

歯科治療に期待することも違いますし、経済状況も違います。

誰彼にもインプラント治療が最適とは思えませんし、全員に保険のブリッジや入れ歯でよかろうもん、ともいくはずもありません。

今回はインプラントと入れ歯を避けつつ、審美性を確保するために自費治療のブリッジを選択しました。

歯の耐久性を稼ぐため、神経も残しました。

それでも、もしこのブリッジを支える歯がまた割れてしまったら、今度は入れ歯かインプラント治療(インプラントの必要本数も増える)のどちらかを選ばなければなりません。

これが他の患者さんだと、また違った選択になるのです。

患者さんは難しい判断をしなければならないこともありますが、当院では出来る限り、患者さんが満足できる選択をできるよう、お手伝いしていきます。