
しみ方が変わったときに整理しておきたいこと
「熱いものまでしみるようになったら、もう神経を取るしかないのでしょうか」。歯科医院でよく受ける質問です。冷たいものに続いて温かい汁物でも痛み、刺激がなくなってもしばらく痛みが残る。この変化は、歯の神経(歯髄)の炎症も含めて原因を調べたいサインのひとつです。ただし、しみ方だけで治療方針が決まるわけではありません。この記事では、考えられる原因と歯髄炎の概要、受診を急ぎたい症状、歯科医院で行う検査の流れをまとめました。仕事や送迎の予定を立てやすくする症状の記録方法も紹介します。
この記事の要点まとめ
- 熱いものもしみる、刺激後も痛みが続く場合は、歯髄炎など複数の原因が考えられます。
- しみ方だけでは神経の状態は決まらず、問診や温度刺激、画像検査などを組み合わせて確認します。
- 痛みの経過や腫れを記録して相談し、検査結果を踏まえて神経を残す処置や根管治療を検討します。
目次
冷たいもの・熱いものがしみるとき、歯の中では何が起きている?

歯髄とは?歯の神経に炎症が起きるしくみ
歯の中心には「歯髄」と呼ばれる組織があり、神経や血管が通っています。一般に「歯の神経」と呼ばれているのがこの部分です。外側のエナメル質と、その内側の象牙質に守られています。それでも、むし歯が深くなったり、詰め物のすき間から細菌が入り込んだりすると、刺激が歯髄に届きやすくなります。その結果、炎症が起こることがあります12。
歯髄の炎症(歯髄炎)は、原因を取り除けば落ち着く可能性がある段階と、回復が難しいと判断される段階に分けて考えられてきました。ただ、両者の境目を症状だけではっきり線引きすることはできません。近年は、従来「回復が難しい」とされてきた状態でも、神経の一部を残す処置の成績が報告されつつあります3。
冷たいものだけでなく、熱いものもしみる場合
冷たい水でキーンとしみても、口から離せば数秒で治まる。このタイプは知覚過敏や初期のむし歯でもみられます。
温かい飲み物でも痛む場合や、刺激がなくなってからも数十秒〜数分ほど痛みが残る場合は、少し事情が違います。歯髄が刺激に敏感になっている可能性も含めて、詳しく調べたい状態です23。
とはいえ、しみ方は手がかりにはなっても、それだけで神経の状態を言い切ることはできません。「熱いものもしみる=神経を取る」とは限りません。自己判断で様子見を続けるより、いつから・どのようにしみるのかを記録しておくほうが、診察で判断材料がそろいます。
知覚過敏・むし歯・歯のひびを考える手がかり
歯がしみる原因はひとつではありません。代表的なものは次のとおりです。
- 知覚過敏:歯ぐきが下がったり、歯磨きの力が強すぎたりして象牙質が露出し、冷たいものや歯ブラシの毛先でしみる
- むし歯:甘いものでしみることがあり、進むと温かいものにも反応しやすくなる
- 詰め物・被せ物の周囲:以前治療した歯のすき間から、再びむし歯ができることがある
- 歯のひび:歯ぎしりや食いしばりが続いて細かなひびが入り、噛んだ瞬間に鋭く痛むことがある12
「以前治療した奥歯である」「噛むと響く」といった情報も、原因を絞り込む材料になります。
歯の神経の炎症が心配なとき、受診を急ぐ目安
刺激の後も痛みが残る・痛みが強まるとき
次のような変化があれば、予定を調整して早めに歯科医院へ連絡する目安と考えてください。
- 熱いものでもしみるようになった
- 刺激がなくなっても痛みが続く
- 数日のうちに痛みが強くなっている
- 夜に横になると痛む、何もしていないのに痛むことがある
なかでも、何もしなくても痛む「自発痛」があるかどうかは、受診時に伝えておきたい情報です。しみ方が以前より変わってきたこと自体が、相談を前倒しする理由になります12。
奥歯の歯茎が腫れ、押すと痛い・発熱があるとき
奥歯の歯茎が腫れて押すと痛む場合、歯髄の炎症が根の先へ広がったケースのほかに、歯周病や親知らず周囲の炎症なども考えられます。歯髄以外の原因も含めて調べる必要があります2。気になっても、指で押して確かめるのは控えましょう。刺激で腫れが強まることがあります。
発熱や顔の腫れを伴うときは、日を置かずに歯科医院へ相談してください。飲み込みにくい、口が開きにくい、息苦しいといった症状があれば、夜間・休日でも救急医療機関への相談を検討してください1。
受診までにできること・避けたいこと
受診までは、しみる飲食物を避け、反対側で噛むようにしましょう。歯磨きはやさしく続け、口の中を清潔に保ちます。長湯や飲酒で血行がよくなると、痛みが増すことがあります。
市販の痛み止めを使う場合は、用法・用量を守ってください。持病や服用中の薬、妊娠・授乳中かどうかを薬剤師に確認してから選ぶと安心です1。薬で痛みが和らいでも、原因がなくなったわけではありません。
予定を立てる際には、次のような記録をスマートフォンのメモに残しておくと役立ちます。
- いつから、どの歯が、何でしみたか(冷たい・熱い・甘い)
- 痛みが続いた時間(数秒か、数分か)
- 何もしていないとき、夜間、噛んだときに痛むか
- 痛み止めを飲んだ時刻と効き方
送迎の都合で受診日を調整したいときも、この記録があれば電話で状況を伝えやすくなります。急いだほうがよいかどうかの相談もスムーズに進みます。
歯科医院では何を調べ、神経を残せるかどう考える?

問診・温度刺激・レントゲンで確認すること
診察は、痛みの経過を伺うところから始まります。事前に残したメモは、この場面でそのまま使えます。続いて、次のような点を確かめていくのが一般的な流れです2。
- 冷たいものや温かいものを当てたときの反応
- 歯を軽くたたいたときの響き方
- 歯ぐきの状態
- むし歯や詰め物の状態
- レントゲンで見た根の周りやむし歯の深さ
レントゲンは役に立つ検査ですが、画像だけで歯髄の炎症の程度まで読み取りきることはできません。ひとつの症状や一枚の画像に頼らず、複数の検査結果を組み合わせて判断します3。結果の見方がわからないときは、その場で質問して構いません。
神経を残す治療と根管治療、判断に関わること
検査結果によって、検討される方法は変わります。
- むし歯や詰め物など原因を処置し、歯髄の反応を経過観察する
- 神経を保護する薬剤を置く方法や、神経の一部を除いて残りを保存する方法(断髄)など、歯髄を残す治療
- 歯髄の回復が難しいと判断された場合の抜髄・根管治療
永久歯で歯髄を残す治療については、一定の成績を示す研究のまとめが報告されています34。ただし、その方法を選べるかどうかは、処置中の出血の様子や歯の状態などを個別に診て判断します。乳歯は別の基準で治療法を検討します5。どの方法を選んでも、治療後に痛みが出たり、経過によって追加の処置が必要になったりする可能性があります。
熊本県でマイクロスコープや歯科用CTについて尋ねるなら
熊本県で歯科医院を探す際、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)や歯科用CTがあるかどうかを気にする方もいるでしょう。にじの森歯科クリニックにも両方の設備がありますが、使うかどうかは診査の内容によって決まります。設備があるというだけで治療内容が決まるわけではありません。
当院では、検査で撮影した画像を一緒に見ていただきながら、状態と選択肢を説明することを大切にしています。以前の治療で「検査結果がよくわからないまま進んだ」と感じた方は、相談の際に次のような点を尋ねてみてください。
- この検査で何を確かめるのか
- 神経を残す方法は選択肢に入るか
- 通院回数と1回あたりの時間はどのくらいか
- 保険診療と自由診療では何が違うか
マイクロスコープを用いた精密な根管治療は、自由診療(公的医療保険が適用されない)として行われることがあります。治療では、歯の根の中(根管)の感染した組織を取り除いて洗浄・消毒し、薬剤を詰めて封をしたうえで、土台や被せ物で歯の形を整えるのが一般的な流れです。通院回数は一般に1歯あたり2〜5回程度、期間は数週間〜2か月程度がひとつの目安とされますが、根の数や形、炎症の程度、被せ物を作る期間などによって前後します。費用は一般に1歯あたり数万円〜十数万円程度と幅があり、被せ物の費用が別にかかる場合もあります。これは一般的な相場であり当院の費用ではありません。実際の費用は医療機関により異なり、当院の費用は診察のうえでご案内します。当院での通院回数や期間についても、診察のうえでご説明します。
根管治療には、次のようなリスク・副作用があります。
- 治療後しばらく、痛みや噛んだときの違和感、歯ぐきの腫れが出ることがある
- 神経を取った歯はもろくなりやすく、割れたりひびが入ったりすることがある
- 根の形が複雑な場合などに感染が残り、再治療や外科的な処置が必要になったり、抜歯になったりすることがある
- 治療中に根の中で細い器具が折れることがある
よくある質問
Q. 歯髄とは何ですか?歯の神経の炎症ではどんな症状が出ますか?
A. 歯髄は歯の中心にある、神経や血管を含む組織です。炎症が起こると、冷たいものや熱いものがしみる、刺激がなくなっても痛みが残る、何もしていないのに痛むといった症状がみられることがあります。ただし、症状の出方には個人差があり、症状だけで炎症の程度は判断できません。
Q. むし歯が神経まで進行しているサインはありますか?
A. 温かいものでもしみる、痛みが長く続く、夜間や安静時にも痛むといった変化は、歯髄に影響が及んでいる可能性を考える手がかりになります。実際の状態は、温度刺激への反応やレントゲンなどの検査を組み合わせて確認します。
Q. 知覚過敏の原因は何ですか?
A. 歯ぐきが下がったり、強い力での歯磨きや歯ぎしり・食いしばりでエナメル質が傷ついたりして、象牙質が露出することが主な原因です。しみても数秒で治まることが多い一方、むし歯やひびと区別しにくい場合もあるため、続くようなら歯科医院で確認しましょう。
Q. 奥歯の歯茎が腫れて、押すと痛いときはどうすればよいですか?
A. 根の先の炎症や歯周病など、複数の原因が考えられます。指で押して確かめることは控え、早めに歯科医院へ相談してください。発熱や顔の腫れがある場合は速やかに、飲み込みにくさや息苦しさを伴う場合は救急医療機関への相談も検討してください。
Q. しみる歯は、すぐに神経を取ることになりますか?
A. 一律ではありません。原因の処置後に経過をみる方法や、神経を残す治療が検討されることもあります。どの方法が選択肢になるかは検査結果によって変わるため、説明を受けて納得してから決めることができます。
参考文献
1. 厚生労働省. 健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報). https://kennet.mhlw.go.jp/information/
2. 厚生労働省. 健康づくりサポートネット(口腔・歯の健康). https://kennet.mhlw.go.jp/information/teeth
3. Ather A, Patel B, Gelfond JAL, et al. Outcome of pulpotomy in permanent teeth with irreversible pulpitis: a systematic review and meta-analysis. Scientific Reports. 2022. PMID: 36385132 / DOI: 10.1038/s41598-022-20918-w
4. Coll JA, Dhar V, Guelmann M, et al. Vital Pulp Therapy in Permanent Teeth: A Systematic Review and Meta-Analyses. Pediatric Dentistry. 2025. PMID: 40533920
5. Coll JA, Dhar V, Chen CY, et al. Use of Vital Pulp Therapies in Primary Teeth 2024. Pediatric Dentistry. 2024. PMID: 38449041
・九州大学付属病院にて研修修了。歯周病治療、インプラント治療(再生歯科・インプラントセンター)、口腔外科、全身管理を中心に研修。
・九州大学付属病院歯周病科勤務。歯周病治療、歯内治療を外科処置を中心に行う。ボランティア団体「ふりーでんす福岡」に所属し、国内ボランティア検診やドイツ国際平和村にて活動。
・東京歯科大学元教授・日本顕微鏡歯科学会指導医の中川貫一先生に師事し、歯内治療およびマイクロスコープ治療を研修。
・2013年9月より、にじの森歯科クリニック開業。精密歯科治療、インプラント治療、矯正治療を中心に診療。
・日本口腔インプラント学会
・日本顕微鏡歯科学会
・日本小児歯科学会
・日本糖尿病協会 登録歯科医
・Pacific Endodontic Research Foundation Japan 熊本・福岡
・日本歯科医師会
・熊本県歯科医師会
・菊池郡市歯科医師会 公衆衛生理事
・熊本県歯科医師スタディグループ新樹会 第45代議長
・菊陽町嘱託歯科医師
・武蔵ヶ丘北小学校学校歯科医師
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